東京高等裁判所 昭和38年(行ナ)107号 判決
【判決理由】二 原告の本件商標と被告の(イ)号標章とが類似するか否か、すなわち、(イ)号標章が本件商標の権利範囲に属するか否か(指定商品の牴触することには問題がないので)を判断するについては、その外観、称呼、観念上の類否を見る上で問題とすべきは、両者がその称呼を共通にする「カツトメン」と「カツト綿」の部分だけであることは、右両者を対比して明らかであるから、結局本件で問題とすべきは、(イ)号標章における「カツト綿」が該標章における要部として本件商標と対比すべき部分であるか否かであるから、以下この点について判断する。
「カツト綿」という語が「截断された綿」を意味することは、「カツト」という語が「切る」という意味で日常生活に使用されていることおよび「綿」が商品名であることは当事者間に争いのないところである。しかも、日常生活において「截断された綿」は、綿のうちでもとくに脱脂綿として精製したものを医療補助品に用いるのが通常であることは、その成立に争のない乙第三十二号証(消毒綿についての実用新案公報昭和十五年九月十七日公告)をまつまでもなく、公知の事実に属する。
したがつて、「カツト綿」が「截断された脱脂綿」という意味を有することは明らかなところといわなければならない。
原告は、「カツト」という英語と「綿」という日本語を組み合わせた「カツト綿」という文字は英和混淆の用法で、普通に用いられる方法によつたものでない旨主張するが、その表現自体からみても、さほど不自然な表現ということもできないから、これをもつて原告主張のように解さなければならないものではない。
そうすれば、「カツト綿」なる語は商品「截断された脱脂綿」については、単にその品質、形状を表わすにすぎないものと解するのが相当であつて、これがただ普通の用法に従つて記載せられている限りにおいては、自他商品の識別標識としての機能をもたない部分であるから、商標ないし標章の要部をなすものとは認めることはできないものといわなければならない。
原告はこの「カツトメン」の称呼を生ずる語は原告の創案にかかるものであつて、前記の各使用は、いずれも原告が本件商標について登録がされた後の不正使用である旨主張するけれども、本件商標は「KATTOMEN」および「カツトメン」を上下二段に横書きしたものであつて、それ自体何らの意味を有するものでない造語にすぎないことは成立に争いのない乙第一号証において原告自身の主張するところであり、しかもその成立に争いのない乙第十五号証の一、二の記載によれば、原告自ら「カツト、メン」の文字、「KATTOCOTTON」および「カツトコツトン」の文字およびに「CUTTINGCOTTON」および「カツテイングコツトン」の文字について権利不要求の申出をして昭和三十年商標登録願第二七、一二六号ないし第二七、一二八号各商標を出願し登録査定をうけた事実が認められるところであつて、本件商標の「KATTOMEN」」「カツトメン」の語は寧ろ「カツト綿」なる語の使用を避ける趣旨で、無意味な造語を商標として登録の出願をしたものであるとみるのが相当であるから、通常の用法をもつて「カツト綿」の語を標章に使用することをもつて右原告の商標権を侵害するものと認めることはできない。
そこで(イ)号標章における、「カツト綿」という文字の表示についてみるに、右は「カツト」という片仮名と「綿」という漢字を組み合わせ、図形の中央部に大きく赤色で表示されているけれども、その書体もありふれた書体であつて、特殊な書体あるいは図形化したもので表示されているわけではないから、その表示の仕方もとくに看る人の目を惹くようなものではない。
したがつて、本件(イ)号標章においても、さきに認定した通りの意味をもつ「カツト綿」という文字を、通常の書体で、商品「截断された脱脂綿」の標章のうちに用いる限りにおいては、この部分に自他商品の識別標識としての機能があるものとはこれを認め難く、これを右標章の要部と認めることはできないものである。(山下朝一 多田貞治 田倉整)
別紙(一) 登録第四七七四八一号商標
別紙(二) (イ)号標章